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映画『Les Traducteurs』(邦題:『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』)は、盗作、裏切り、復讐、翻訳という職人技を舞台に展開される異色の密室ミステリーです。架空のベストセラー作家「オスカー・ブラッシュ」をめぐる謎が軸となり、最後のどんでん返しまで観る者を強く惹きつけます。
オスカー・ブラッシュとは?:物語の根幹にある謎(ネタばれ)
オスカー・ブラッシュは「Dedalus(デダリュス)三部作」の著者として、作中世界で絶大な人気を誇る作家です。完結編『The Man Who Did Not Want to Die』の同時発売計画が物語を動かします。
しかし、映画後半で衝撃の事実が明かされます:
オスカー・ブラッシュは実在しないペンネームであり、本当の作者は無名の古書店主ジョルジュ・フォンテーヌである。
出版社社長エリック・アングストロームが、ジョルジュの原稿を盗み、名前を替えて「オスカー・ブラッシュ」として出版したのです。
さらに、英語担当の若き翻訳家アレックス・グッドマンが語る真相:
アレックスは、ジョルジュの息子であり、自らが本当の「オスカー・ブラッシュ」だと明かします。
彼は完結編の原稿を自ら書き上げ、翻訳プロジェクトに潜入。出版社とエリックを暴き、父の名誉と真実を取り戻すために計画を遂行したのです。
つまり、「オスカー・ブラッシュ」という名前は虚構であり、真の作者はアレックス。父の古書店主ジョルジュはエリックによって殺害されていたことも含め、すべては復讐と正義のドラマでした。
登場人物紹介:翻訳家たちとその背景
| 名前 | 国語 | 特徴・背景 |
|---|---|---|
| エリック・アングストローム | 出版社社長 | 「オスカー・ブラッシュ」の出版権を握る冷徹な人物。監視・圧力で翻訳者たちを統制。真の作者を知り、自らの罪を隠し続けようとする。 |
| アレックス・グッドマン | 英語 | 最年少で自由な雰囲気の翻訳家。だが実は黒幕で、すべてを計画した真の「オスカー・ブラッシュ」。孤高の復讐者。 |
| カテリーナ・アニシノバ | ロシア語 | 原作Dedalusの熱狂的ファン。“レベッカ”に憧れ、作中へ自己投影するほど情熱的。アレックスと深い心理的共有を持つ。 |
| ダリオ・ファレッリ | イタリア語 | 自信家で社交的。SNSで著者との接触を匂わせ、エリックの目に留まる。 |
| エレーヌ・トゥクセン | デンマーク語 | 母で妻、かつて作家志望。理想と現実のはざまで精神が崩れ、自死という悲劇へ。 |
| チェン・ヤオ | 中国語 | 冷静沈着、思慮深く安定した存在感。 |
| テルマ・アルヴェス | ポルトガル語 | 反骨精神強く、煙草を好む挑戦的な性格。 |
| ハビエル・カサル | スペイン語 | 吃音があり、ギプスで足を固定。内向的だが翻訳への誠実さあり。 |
| イングリット・コルベル | ドイツ語 | 熟年の翻訳者。疎遠になった娘との葛藤を抱えつつ仕事に臨む。 |
| コンスタンティノス・ケドリノス | ギリシャ語 | 文学より金銭重視。翻訳を職業と割り切る冷たいタイプ。 |
| ローズ=マリー | アシスタント | 柔和な秘書だが実は重要な情報を握る鍵。裏切りの可能性も示唆。 |
| ジョルジュ・フォンテーヌ | 元作家 | 実在の作者(アレックスの父)。エリックによって命を奪われる。真の創作者として劇後に重要性を増す。 |

ストーリー構造を章立てで深掘り
第Ⅰ章:密室翻訳の始まりと圧力の構築
フランクフルト・ブックフェアで、エリックがDedalus完結編の世界同時発売を宣言。9か国の翻訳者をフランスの豪邸地下に隔離し、20ページずつ配付・回収する厳重管理で、翻訳史上類を見ないプロジェクトが始動します。電子機器は禁止、外部との接触は一切なし、監視カメラや警備員による完全統制。翻訳者たちは緊張と策略の中で翻訳を開始します。

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第Ⅱ章:流出と脅迫状、疑心暗鬼の広がり
作業が始まって間もなく、最初の10ページがネットに流出。それに続いて500万ユーロの身代金要求の脅迫状。エリックは翻訳者全員を疑い、個別の取り調べや荷物検査を命じます。

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トゥクセンの隠し持つ自作小説の原稿や、テルマの挑発的態度など、人物間の緊張はピークに。密室に放り込まれた人間関係が崩れ始めます。

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第Ⅲ章:追いつめられた翻訳者たちと破滅
流出は止まず、エリックは電力停止、暖房停止など、極限状態による心理的圧迫を強化。

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トゥクセンの自死、カテリーナの銃撃負傷事件が発生。救急や警察が介入するも混乱は深まり、人間関係は断裂状態に。誰が信頼できるのか、さらなる混乱が訪れます。

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第Ⅳ章:フラッシュバックによる真実の断片
ここから物語はフラッシュバックを交えた構造に。アレックスが以前から原稿をコピーし翻訳を準備していたこと、密かに共謀者と手を組んでいた事実が少しずつ明かされます。そしてついには、アレックスこそがオスカー・ブラッシュ本人であり、真の作家であることが明かされます。

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第Ⅴ章:結末と告白、そして裁き
刑務所の面会室で、アレックスがエリックに真相を語る場面。
「僕がこのシナリオを組んだ。父の名誉を取り戻すために」
彼は父ジョルジュの名誉と正義を守るために、出版社とエリックを暴き出す計画を完遂。エリックは逮捕され、残る翻訳者たちは翻訳を終えて外の世界へ戻ります。正義は貫かれ、真の作者の存在が明らかになる結末です。

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心に響く感想と共感ポイント
翻訳者への敬意とリアルな描写
この映画では、翻訳という職業の緻密さと神経を使う作業がリアルに描かれており、業界関係者からも「非常に共感できる」と評されます。ダン・ブラウンの小説『インフェルノ』の翻訳プロジェクトをベースにした設定は、実際に存在した同時翻訳の体制にインスパイアされたもので、翻訳の裏側にあるリスクと神経戦が観終えた後も心に残ります。
二重三重に仕掛けられたプロットの快感
この映画は“なぜ内部で漏えいを計画したのか”“どうやって仲間にばれずに遂行したのか”が焦点となり、細部の伏線が終盤に一気に結実する構成が爽快です。
群像劇の孤独と裏切り、美と緊張の映像美
9人という多国籍キャストが織りなす密室劇。その中での孤立感と共依存、一部の救い、他の崩壊。特にエレーヌの狂気、自殺の背景、カテリーナの情熱、アレックスの孤独な正義は深く胸に残ります。映像は地下豪邸の閉塞感を強調し、緊張と密度が画面から伝わってくるようです。
最後に:映画の魅力とは?
『9人の翻訳家』は、翻訳という職業の繊細さと出版業界の暗部を背景に、密室サスペンスと人間ドラマを融合した異色のミステリーです。
誰が翻訳者で、誰が作家か。表層では匿名性を持つ存在が、実は最も真実を語る者だった――この衝撃が物語を支配しています。オスカー・ブラッシュという名前に込められた虚構と現実、復讐と正義。観た後に「翻訳ってただの作業じゃない」と感じる、その知的興奮こそが本作の最大の魅力です。



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