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公開日:2025年5月23日/監督:渡辺一貴/主演:高橋一生/上映時間:約110分。 本作は荒木飛呂彦のスピンオフ短編「懺悔室」を基に、ドラマシリーズのスタッフが再集結して映画化した第二作目で、原作の骨格を尊重しつつ映画オリジナルのエピソードを大胆に織り込んだ作品です。公表されている基本情報やキャストの顔ぶれ、全編ヴェネツィアでの撮影といった制作上の事実は公式サイトや各映画情報サイトで確認できます。
あらすじ
漫画家・岸辺露伴(高橋一生)は、取材旅行で訪れたイタリア・ヴェネツィアの教会で、ある仮面の男の“懺悔”を聞くことになります。

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男の名は田宮(井浦新)。
(顔を整形した田宮)
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彼の告白は、かつて「誤って」浮浪者を死なせてしまったこと、そしてその浮浪者からかけられたという奇妙な呪い――「幸福の絶頂を迎えた時に“絶望”を味わう」

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というもの――の告白でした。田宮は長年、幸福を避け続け、幸せを感じることから逃げてきたのです。ところがある日、遊ぶ少女(マリア:玉城ティナ)の無邪気な姿に触れてしまい、彼は久しぶりに「心からの幸福」を感じる。すると呪いは現実となり、死んだはずの浮浪者ソトバ(戸次重幸)が姿を現します。田宮は“試練”として、ポップコーンを用いた奇妙な競技(“口で3回連続でキャッチ”など)に挑まされることになります。

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露伴は相手の心を本にして読む能力「ヘブンズ・ドアー」を使い、告白の裏側を覗きますが、やがて自分自身にも同じ“幸福になる呪い”が迫っていることに気づく

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――というのが、映画の前半〜中盤にかけての流れです。
映画はここで原作的な「告白パート」を丁寧に描き、後半では原作を拡張したオリジナル展開(身代わりや入れ替わりの仕掛け、田宮と露伴の心理戦の深化、マリアの存在が物語に与える影響の拡大)へと移行します。原作の大胆な“仕掛け”(読者を欺くトリック)を映画側がどのように再構成し、視覚的・演出的に提示するかが本作の肝です。
登場人物(主要キャスト)と映画版での役回り
岸辺露伴(高橋一生):好奇心旺盛で冷静。作家として「見たいものを見、聞きたいものを聞く」露伴は、今回も観察者として事件に関わるが、彼の能力ゆえに巻き込まれていく。

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泉京香(飯豊まりえ):露伴の担当編集。露伴の良心・パーソナルスペースを保つ立場として物語に色を添える。

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田宮(井浦新):本作の告白者(呪いから逃げるために整形した顔)。過去の事件と呪いに苦しむ男で、映画版では原作以上に背景や動機が掘り下げられる。

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マリア(玉城ティナ):田宮の娘。彼女の“無垢さ”が物語の鍵となり、呪いの発動に関わる重要人物。

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ソトバ(戸次重幸):呪いの主体である浮浪者。存在感ある怪異を演じる。

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水尾(大東駿介)、ロレンツォ(Andrea Bellacicco) など、脇を固める役が物語の仕掛けに深みを与える。
映画化での“仕掛け”と原作からの変化 — 見どころの深掘り
- 舞台が“ヴェネツィア”であることの意味
本作は邦画として初めて“全編ヴェネツィア・ロケ”で撮影されたと公表されています。水の都の運河、古い教会、仮面文化――これらは物語の雰囲気作りに大きく貢献します。ヴェネツィアの光と影が、映画特有の静かな不穏さを増幅させ、原作にある“地の怪しさ”をリアルなロケーションで表現していることが何よりの強みです。監督・渡辺一貴のインタビューでも“場所と露伴のツーショット”を撮ることに主眼を置いたという発言があり、ロケ地選定の確信が伝わってきます。 - “ポップコーン”という具体的な装置
原作での“キャッチゲーム”は視覚的にも緊張を生む場面でしたが、映画はそれをより大きなドラマの装置として扱います。「幸福を味わってしまった者へのペナルティ」を実地で見せる」ことで、観客は単なるホラーではなく倫理的なジレンマに直面します(誰が罰を受けるべきか、呪いは正当か否か――など)。このパートの演出は賛否を呼んでおり、原作ファンの中には映画的改変を評価する声、惜しいと感じる声の両方があります。 - “身代わり”とアイデンティティの入れ替わり
映画オリジナルの改変として、登場人物の立場や“身代わり”に関する仕掛けが挿入され、ラスト近くの真相解明で強い効果を発揮します。原作の驚愕を別の形で再現しようとする試みは、映像化特有のメリット(俳優の表情、ロケーションの重み)を活かしています。レビューではこの改変が成功しているという評価と、原作の持つ“読者を騙す快感”を少し薄めてしまったという意見が見られます。
テーマ解析:幸福・呪い・観察者としての露伴
映画を貫く主題は「幸福とは何か/幸福を感じることが罪になるか」という逆説的なテーマです。呪いが示すのは、“幸福の頂点”と“絶望”が表裏一体であるという恐ろしい逆説。しかもそれが他者によって与えられた“呪い”であるとすれば、被害者は自らの感情を制御するしか手がなくなります。
露伴は観察者であり創作者です。彼のヘブンズ・ドアーは他者を“読む”能力であって、他者の幸福や絶望を外部から編集し得る力でもあります。映画はその視座を巧みに利用して、「観察すること/書くこと」が道徳的にどんな責任を伴うのかを問いかけます。露伴が“読む”ことで事件は進むが、同時に露伴自身も影響を受ける――この構造が映画の倫理的な緊張感を生んでいます。
演出・映像・音楽:ヴェネツィアを“匂わせる”画作り
ロケの大胆な選択(全編ヴェネツィア)が映像美の要です。教会のステンドグラス、狭い路地、水面に反射する夕暮れの光――これらが静かな不安を醸成し、ちょっとした表情や視線だけで恐怖を匂わせる演出が多用されます。渡辺監督の狙いと脚本の小林靖子が織りなす演出設計は、原作の“短編の持つ一撃の怖さ”を、映画尺に合わせて何層にも重ねることに成功しています。
感想(肯定点・違和感点)
肯定点
高橋一生の露伴像が非常に魅力的。冷静さと好奇心の揺らぎを均しく演じ、観客を露伴の視点に引き込む。
ヴェネツィアの風景と教会の空気感が作品に唯一無二の質感を与えている。
演出の緻密さ(カメラワーク、間の使い方)が緊張感を保ちながら物語を進める。
違和感・注意点
原作の“読者を驚かす小気味よさ”を映像化で同じ強度に保つのは困難で、映画オリジナルの改変が好き嫌いを生む。原作の“瞬間的な驚き”を期待すると物足りなく感じる。
中盤以降の展開で情報が多く、説明的に感じる箇所があるため、テンポを気にする。
メイキング情報・小ネタ
邦画初の“全編ヴェネツィアロケ”という挑戦がなされている点は、制作上の大きなトピックです。ロケハンや許可取得、現地スタッフとの調整といった苦労が撮影秘話として語られており、作品の“画”に直結しています。
脚本は小林靖子が担当。シリーズのドラマ部分を長年手がけてきた彼女が、原作の持つ独特のテンポをどのように映画に落とし込むかが注目点の一つでした。脚本家自身の発言から、「今だからこそ描けた」という確信が感じられます。
映画公開にあわせて荒木飛呂彦の描き下ろしイラストなどの入場者特典・プロモが用意されるなど、原作ファンへの配慮もされています。
総評
原作ファンも、実写初見の方も一定の満足を得られる映画です。特に「映像美」「主演の演技」「舞台としてのヴェネツィア」を重視する視聴者には強くおすすめできます。一方で、原作の短編が放つ“読者を驚かす一撃”をそのまま求めると期待外れに感じる可能性もあります。とはいえ、映画としての独立性を保ちつつ原作への敬意を示した良質な実写化であることは間違いありません。
最後に
この映画は「美しい場所で生まれる怖さ」を体感させてくれる作品です。露伴という“見る者”が自らの視線の行方で影響を受ける——その構造は、我々観客にも問いを投げかけます。原作を知る人も知らない人も、ヴェネツィアの空気と俳優陣の演技に心を持って行かれるはずです。ぜひAmazonプライムでその空気を味わってみてください。



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